キーロフ「白鳥の湖」鑑賞・魔性のマハリナ

昨日、スカパーでマハリナ&ゼレンスキーの「白鳥の湖」を放送したので
予約録画しておいたものを鑑賞した。
ギエム、マカロワ、ハート、ミハリチェンコ、アナニアシヴィリ、フォンティーンなどなど
ガラや全幕などを含め、いろいろなオデットを見てきたが、わたしはこのマハリナのオデットが
一番好きだ。

白鳥の湖」といえば黒鳥も有名だが、なんと言っても私が好きなのは世界一美しいといわれる
2幕のアダージョ
このアダージョを踊るマハリナのなんと妖艶なことか。
同性でも見ていて鳥肌が立つほどだ。
この役で定評があるイヴリン・ハートが「オディールにあってオデットにないもの。それはセックスアピール」と言っていたが、まさにその対極の解釈のオデットといった感じ。

1990年の公演のものだからおそらくこの頃マハリナは21か22ぐらいだろう。
この若さでこの色気。出そうったって出るもんじゃないよなぁ。
もともと彼女は当時のキーロフのボス、ヴィノグラートフを夢中にさせていた
らしいというから、生まれながらの妖女なのかも。

妖女、といえばむしろオディールあたりの方がはまりそうな役だが、不思議なことにマハリナの場合、
オデットの方がずっとなまめかしい。
彼女の持ち味はおそらくオディールのようにバーンと押し出す色気ではなく、オデットのように
引きずり込むような陰性の色気なのかもしれないな。

彼女のオデット、その中でも第2幕のアダージョを見るのはこれで2度目だが、
相手役によってもまた、少々違って見える。
この映像では、これまたまだ若いころのゼレンスキーだが、彼のジークフリードはなんとなくクールな感じを受ける。
一方、この映像の2〜3年後と思われるガラでのアダージョでは、アンドリス・リエパだったのだが、
少年っぽさを残した彼の表情豊かなジークフリードの方が、「オデットの色気に翻弄される」という
雰囲気が出ていて、マハリナの妖艶さがさらに引き立っていたような気がする。

今まで見た中ではマハリナが一番だが、この役に定評がありながらまだ見ていないボリショイの
グラチョーワ、キーロフのロパートキナパリ・オペラ座のルスティテュでも機会があれば
ぜひ見てみたい。